「等方性磁石と異方性磁石」~知っておきたい性質や特徴、取り扱い方法~

2023.10.24 プレス


マグネットシートは業種、業界にかかわらず、室内から屋外まで幅広い用途に利用できる、とても便利な材料として知られています。

 

マグネットシートに使用される磁石には、「等方性磁石」「異方性磁石」があります。

アイテムによって向き不向きが生じるため、販促やノベルティを制作する前に、磁石の性質を知っておくと役に立ちます。

 

また、取り扱いによっては劣化を招くこともあるため、注目が必要です。

 

そこで今回は、マグネットシートの素材や性質、取り扱い方法についてみていきましょう。

 

 

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☆マグネットシートの素材と二つの磁力

 

マグネットシートの主素材は、酸化鉄を主成分とする磁性酸化物「フェライト」です。

フェライト単独ではシート状にならないので、塩素化ポリエチレンといった接着剤の役目をする樹脂(バインダー)と混ぜ合わせて成形します。

固まったシートに着磁(磁力を入れる)を施すと、マグネットシートができあがります。

 

マグネットシートの磁力には「等方性」「異方性」の2種が存在し、次のような特徴があります。

 

 

等方性磁石 

 

磁石粒子のN極とS極の向きがバラバラになので、どの方向にもほぼ同じ磁力を発生させる磁石。

着脱が簡単で、各種マグネット、パネルボードやPOPなどのディスプレイ、文房具や教材、販促用品ほか、さまざまな用途に応じて利用できる。

そのため「室内用マグネットシート」には、主に等方性磁石が用いられている。

 

 

異方性磁石 

 

磁石粒子のN極とS極が一定方向に整列しており、特定の方向にのみ強い磁力が働く磁石。吸着力に優れており、電化製品、工業製品などに使われている。一度貼ると剥がれにくいことから、「車用(屋外用)マグネットシート」は異方性磁石を使用している。

 

二つを比較すると、等方性磁石より異方性磁石の方が磁力が高く、たとえば同じ材質のマグネットシートの場合、異方性磁石の磁化の強さは等方性磁石の約2倍、吸着力は約4倍になります。

 

 

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☆マグネットシート使用時のトラブル回避方法

 

便利で使い勝手の良いマグネットシートですが、取り扱いによっては、早期の劣化などを招くことがあります。そのため、使用時には注意が必要です。

 

 マグネットシート利用の注意点 

 

・マグネットシートには、名前のとおり磁力があるので、時計や磁気カード、パソコンといった、磁気の影響を受ける恐れのある機器は近付けないようにする

 

・変形・劣化の原因となる、高温多湿の環境下での保管・使用は避ける。

 

・凹凸部や角のある場所への貼り付けは、劣化や破損を招くので注意が必要

 

・貼り付けたい場所に汚れが付着していると、吸着力が弱くなるため、その部分の埃やゴミといった汚れをきれいに拭き取り、十分乾燥させてから使用する

 

・マグネットシートの汚れを取る際は水拭きにする。溶剤はシート表面を傷めるので使用しない

 

マグネットシート(磁石)は経年劣化により、どうしても吸着力は少しずつ弱まっていきます。

 

ただ、屋外用・屋内用共に、上記の点を気をつければ、劣化を抑えて長く使うことも可能です。

 

 

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☆車用マグネットシートは「ブロッキング現象」にご用心

 

自動車や屋外にて使用する、屋外用(車用)マグネットシートは、室内用マグネットシートより、厳しい環境にあるといえます。

 

風雨はもちろん、気温や湿度が直接影響するため、室内用以上に劣化の危険性が高くなります。

 

特に気をつけたいのが、車用マグネットシートを貼った場合に起きやすい「ブロッキング現象」です。

これはマグネットシートが接地面に貼り付き、剥がれなくなることで生じます。

 

この時、無理にマグネットシートを取り除こうとすると、車にシートの磁石が残る、磁石の跡が付いて、車のボディが変色するなどのトラブルが起こります。

 

ブロッキングを予防するためには、マグネットシートを貼りっぱなしにせず、定期的に貼り替える、貼る場所を変更することが大切です。特に夏の暑い時期は、23日に1回、貼り替えを行うと、日焼けによる色ムラも防ぐことができます。

 

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○コラム:マグネットシートを貼っても安全走行

 

マグネットシートを貼った車で走るのは、「走行中に剥がれそうで、なんとなく不安」だという声を耳にすることがあります。

 

万が一、剥がれるケースがあるとすれば、それは「磁力低下などの劣化」「風圧」「悪天候」「装着時のミス」などが考えられます。

 

「磁力低下などの劣化」「装着時のミス」の場合、これらは日々のチェックやメンテナンスで回避することが可能です。

 

また、「風圧」や「悪天候」によるアクシデントが予想される強風や豪雨の日は、マグネットシートが特に剥がれやすくなるので、最初から外して走行するのがおすすめだといえます。

 

なお、天候にかかわらず、高速道路でのマグネットシートの利用は禁じられています

その理由は、剥がれたシートがフロントガラスに貼り付くなど、後続車の走行を妨害する危険があるからです。

 

マグネットシートを使用する際は、正しい装着で、安全走行を心がけましょう。